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外国為替アナリスト内田稔のコメント「ドル円160円台回復の条件」
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執筆アナリスト
CCIアセットパートナーズ
外国為替アナリスト内田 稔
うちだ みのり
4月以降の振り返りと見通し
4月に入ると米国とイランの停戦期待を背景に有事のドル買いが後退した。しかし、緊張緩和は同時にリスク選好の円売りも招きやすいうえ、日銀が利上げを見送るとの見方が強まると、ドル円はじり高に推移した。金融政策を巡っては、日銀が予想通り利上げを見送った一方、据え置きを決めたFOMCはややタカ派的と受け止められた。3名の参加者が今後の利下げを示唆する声明文に反対したためだ。この結果、ドル円はドル高主導により、160.79まで上昇し、一昨年の高値161.95も意識され始めた。もっとも、その後は2年ぶりに複数回の円買い介入が行われた模様で、ドル円は急落。5月6日には一時155.04まで下落する場面もみられた(図1)。
当面の見通し
日銀のデータによれば、4月30日から5月6日までの間に総額10兆円規模の円買い介入が実施された模様だ。これは、2024年4月29日と5月1日を合わせた介入額(計約9.8兆円)に匹敵する過去最大規模であり、当局の160円防衛姿勢がうかがえる。今後も160円に接近する局面では介入が見込まれ、ドル円の上値は重くなりそうだ。しかし、日本の短期実質金利(=政策金利-インフレ率)は依然としてマイナス圏にとどまり、円安圧力は根強い。また、日銀が仮に利上げに踏み切った場合も円安抑制効果は限定的となる可能性が高い。年内2回程度の利上げがすでに織り込まれているうえ、インフレ率の上昇が見込まれ、短期実質金利はマイナス圏にとどまるからだ。さらに、ECBやBOEについて年内2回以上の利上げが見込まれており、FRBにも利上げ観測が浮上してきた。米国では労働市場の悪化に歯止めがかかりつつある上、4月の消費者物価指数が高い伸びを示したためだ(図2)(図3)。
その上、米国の株式相場は堅調に推移しており、個人消費も底堅い。利下げにはかなりの距離が生じており、ウォーシュ新議長就任後もFRBは様子見姿勢を維持する公算が大きい。今後、さらに利上げが意識されるようであれば、ドル高にけん引され、ドル円が介入警戒感に反して160円台を回復する可能性も十分と言えよう。一方、米国のインフレが和らげば再び利下げ期待が台頭し、ドル が軟化すると考えられる。但し、その場合でも円が弱いままであればドル円は下げ渋るだろう。その上、円安とドル安が重なると、相対的に他通貨が強含む。これはクロス円が堅調に推移するパターンと言え、膠着するドル円を横目に年初来高値をうかがうクロス円の通貨ペアが現れても不思議ではない。
2026年5月13日、日本時間9時脱稿
内田稔うちだ みのり
株式会社CCIアセットパートナーズ外国為替アナリスト、高千穂大学商学部教授(専門は国際金融論、外国為替)、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員
1993年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行後、一貫して市場部門に在籍。2011年4月から2022年2月までチーフアナリストを務め、2022年4月から現職。金融専門誌J-MONEYの東京外国為替市場調査では2013年から9年連続アナリスト部門個人ランキング第1位。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本金融学会および日本ファイナンス学会会員。テレビ東京ニュースモーニングサテライト、ロイターコラム外国為替フォーラム、プロピッカー(News Picks公式コメンテーター)などメディアでの情報発信も多数。
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